今回ご紹介するのは、入居者が無断で設置した浄水器の撤去方法に問題があり、結果として床全面の修繕が必要となった水漏れトラブル事例です。入居者は、当社およびオーナーへの事前相談を行わず、当社指定外の日系浄水器業者と個別に契約し、キッチン下の配管に浄水器を設置していました。居住中は特に問題なく使用されていたため、当社側も設置の事実を把握していない状態でした。
入居者は引っ越しの都合上、契約満了日の数日前に管理事務所へカードキーを返却し、退去を完了していました。その数日後、管理事務所のスタッフが部屋のドア下から水が漏れているのを発見します。カードキーを使用して室内に入ると、すでに部屋の中は水びたしの状態となっており、キッチン下からの水漏れが確認されました。
漏水はすでに床下まで回っており、フローリングだけでなく巾木部分にまで被害が及んでいました。そのため部分的な補修では対応できず、広範囲にわたる修繕が必要な深刻な状態となっていました。
調査を進めたところ、退去前に浄水器業者が浄水器の撤去作業を行っていたことが分かりました。キッチンシンク下の配管には浄水器用の分岐部分が残され、水色のキャップで塞がれていましたが、そのキャップには亀裂(割れ)が入っている状態でした。
実際の写真を確認すると、このキャップは完全に密閉できておらず、水漏れが発生してもおかしくない状況であったことが分かります。そこで当社指定の浄水器業者であるCKMAに確認を依頼したところ、キャップ表面にギザギザとした傷が付いている点が指摘されました。
本来、このようなナット型のキャップはレンチやモンキーレンチを使用して均等に力をかけ、確実に締める必要があります。しかし今回のキャップには、プライヤーで掴んで回したような痕跡が見られたことから、工具の選択を誤った可能性が高いとの見解でした。プライヤーで強く掴んだ状態で回したことで表面に傷が付き、その際に無理な力が加わり、亀裂が入ってしまったものと考えられます。
水道回りは、一度水漏れが発生すると床下や建材にまで被害が及ぶ恐れがあり、賃貸物件においては特に慎重な施工が求められます。そのため、このような方法で作業を行うこと自体、一般的には考えにくいというのが専門業者の見解でした。
後日、入居者の勤務先にて話し合いが行われ、入居者、浄水器業者、保険業者、当社の4者が集まりました。オーナーの立場としては「契約満了日までは入居者の責任であるため、修繕費用を負担してほしい」という主張です。一方、入居者は「すでにカードキーを返却し退去しているため、自身に責任はない」との立場でした。また日系の浄水器業者は、「元から付いていたキャップをそのまま戻しただけであり、自分たちの作業に問題はない」と説明し、裁判などの対応も辞さないという強い姿勢を示しました。しかし、この点について後日、当社指定の浄水器業者であるCKMAに改めて確認を行いました。
CKMAによると、このような止水用キャップは高価な部品ではなく、取り付け・取り外しを繰り返すことで徐々に消耗する消耗品に該当します。そのため、現場作業時には常に新品のキャップを携行しており、浄水器の撤去などで止水処理を行う際には、既存のキャップを再利用するのではなく、新品と交換するのが業界の常識的な対応であるとの見解でした。
今回のように、使用済みのキャップをそのまま再利用した場合、見た目では問題がなくても内部に劣化や微細な傷が残っている可能性があり、水圧がかかった際に亀裂や水漏れにつながるリスクが高まります。この点からも、今回の対応は専門的な観点では適切とは言い難く、話し合いは依然として難航する結果となりました。
さらに浄水器業者は、当社物件で加入している「生活安心保険」の資料を提示し、補償上限が25万バーツであるため保険が適用されるはずだと主張しました。確かに本保険の補償上限は25万バーツですが、実際の保険金支払いは修繕対象の減価償却などが考慮されます。また仮に保険が適用された場合でも、原因を作った浄水器業者に対して保険会社から求償が行われる可能性があり、決して免責になるわけではありません。
今回の問題は、入居者が当社指定ではない浄水器業者を選び、事前相談なく設置してしまった点も一因ではあります。しかし、客観的に見ても今回の被害は浄水器業者側の撤去・施工対応に起因していると考えられる内容でした。それでも業者が一切非を認めなかったため、このままでは入居者のデポジットが返却されないなど、不利な状況に陥る可能性がありました。
そこで当社は、内装業者を手配して修繕見積もりを作成し、オーナーおよび保険会社との交渉を進めました。その結果、修繕費用は297,460.00バーツとなり、保険で適用された金額は約17万バーツでした。生活安心保険の補償上限は25万バーツですが、減価償却の影響により全額が補償されるわけではありません。
修繕見積の合計金額は297,460.00バーツ
| No | 工事項目 | 数量 | 単位 | 金額(バーツ) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | コンドミニアム保護用 仮設養生 | 1.00 | 一式 | 3,000.00 |
| 2 | 床解体および廃材処分 | 1.00 | 一式 | 6,000.00 |
| 3 | 防カビ・防湿フロア処理 | 81.14 | ㎡ | 12,982.40 |
| 4 | エンジニアードフローリング(150×900×12mm) | 81.14 | ㎡ | 194,736.00 |
| 5 | フローリング巾木+塗装 | 54.86 | ㎡ | 11,520.60 |
| 6 | 壁塗装 | 150.86 | 一式 | 19,611.80 |
| 7 | エアコン清掃(3台) | 1.00 | 一式 | 4,000.00 |
| 8 | ハウスクリーニング | 1.00 | 一式 | 5,000.00 |
| 工事小計 | 256,850.80 | |||
| 現場管理費・諸経費 | 21,800.00 | |||
| 小計 | 278,650.80 | |||
| 値引き | -650.80 | |||
| VAT(7%) | 19,460.00 | |||
| 合計金額 | 297,460.00 | |||
不足分について当社は、入居者に負担させることは妥当ではないと判断し、オーナーと交渉を重ねました。その結果、築年数の経過した部屋であることを考慮し、不足分はリノベーション費用としてオーナーが負担することで合意に至りました。これにより、入居者のデポジット11万バーツは一切差し引かれることなく、期限内に全額返金されました。
入居者に11万バーツ全額返金されたデポジット費用
後日、入居者からは「デポジットが満額返金され、本当に感謝しています」という言葉をいただいています。対応には多くの時間と労力を要しましたが、入居者を守ることができた非常に良い結果となりました。
今回の事例から分かる通り、浄水器やウォシュレットなど水回り設備の設置・撤去は、施工方法一つで物件全体に深刻な被害を与える可能性があります。賃貸物件では自己判断で作業を行わず、必ず事前に管理会社や仲介会社へ相談することが重要です。また「日系だから安心」という先入観を持たず、万が一の際に責任を持って対応してくれる業者を選ぶ必要があります。
当社で提携している浄水器業者CKMAは、日頃のサービス対応だけでなく、問題が発生した際にも逃げずに向き合う姿勢を持った信頼できる業者です。当社は、トラブルが起きた際に「当事者同士で話してください」と責任を放棄することはありません。被害を最小限に抑え、迅速かつ誠実に解決へ導くことを最優先に、今後も入居者が安心して暮らせる環境を守り続けてまいります。















